思い出はタカラモノ

舞台と推しの話メイン

比叡山延暦寺ライブ2020

推しの人がすごかったという話。


8月29日、自宅でこの配信を観た。



開催が発表されたのは6月27日、くるむくん初の単独イベント(無観客生配信)の最後に

世界遺産朗読」

という文字(マジック手書き可愛い)が現れて、頭に?が飛んだものだ。
舞台おたく歴が浅いので、恥ずかしながら朗読劇を観たことがなく「どっかの世界遺産で本を朗読するんだろう」「なんかよく分かんないけど楽しみ」くらいに思っていた。



ところが蓋を開けてみたら、
・朗読劇+ライブの二部構成
延暦寺の中でも、昼は東塔の「猿の間」、夜は阿弥陀堂の「猿の間」とそれぞれ違う場所で二公演開催。回替わり要素あり
・初めて自身が作詞した「親愛なる君に」を含む全6曲を披露、カバーはなく全てオリジナルの楽曲
という、俳優さんが初めて行うライブにしては信じられないほど豪華で、予想を大きく上回る公演だった。


もう他に言葉が見つからないからそのまま書くけど、めちゃくちゃにかっこよかった。


以下ネタバレを含む超個人的感想。


朗読劇


事前に「猿(さる)の間」にいる謎の男「猿(えん)」を演じることは知らされていたが、私はてっきりくるむくんがくるむくんの姿で現れるものと思っていた。

ところが初っぱな画面にどアップで映ったのは、赤い着物を纏い、お顔や手の甲に隈取メイクのような赤いラインを引き、煙管を持ち、真っ直ぐに前を見つめる金色の瞳、それは紛れもなくくるむくんではなく「猿」だった。

くるむくん自身は若いし、勿論猿の格好をしていてもそれは変わらないんだけど、猿の風貌というか纏う雰囲気は「青年」とは駆け離れていて、ずっとずっと長い時を生きていきたような、言わば「人ならざるもの」

猿の口から語られたのは比叡山延暦寺の歴史(織田信長明智光秀らと共に比叡山を焼き払ったこと)や、まるで自分のことのように感じられるくらいに切ない、人と人ではないものの恋物語
長い時の中で恐らく猿自身が見てきた「歴史」を、迷い込んだ「貴方」に対して読み聞かせる姿は、憂いを帯びていて、今にも消えてしまいそうな幻のようにも見えた。

更に驚いたのが夜公演。
猿の容姿は全く同じように見えたが、話が進んでいく中で頭髪にやや白髪が混じっていることに気が付いた。

夜の恋物語に出て来た「男」の容姿は「殆ど変わらない」という。若い人間が初老を迎えるほどの時が流れているのに。

昼公演では「黄色いワンピースを着た歳若い女性」、夜公演では「黄色い着物の初老の女性」と語っていたことを踏まえても、恐らく「人と人ではないものの物語」として語られたのは、猿の過去の話だったように思う。

それに気が付いた時のハッとした、あの高揚感にも似た気持ちは、まさに過去の観劇で感じていたものと同じだった。
場所は自宅だけれど、今自分はお芝居を観ていて、間違いなくくるむくんと同じ時間を共有しているんだと思えた。

台詞の言い回し、間の取り方、昼公演から夜公演の間にブラッシュアップされていて、より感情移入しやすかった。
前々から成長が爆速だなと感じてはいたけど、この数時間でも修正してくるところ、本当にすごい人だと思う。

ライブパート

朗読劇と同じくらい度肝を抜かれた。
全部オリジナル曲であること、その中にはダンスナンバーも含まれることが1週間前に発表されたが、あそこまで本格的なダンスを見せられるとは正直想像もしていなかった。

ダンスが上手なことは刀ミュのステージで十分に分かっていたが、また毛色の違うダンスで、華やかさよりかっこ良さ重視の振り付けというか、とにかくくるむくんのキレの良さが引き立っていた。
(専門用語を知らなすぎて上手く説明できないのが悔やまれる…)

個人的に振り付け師がどなただったのか非常に気になる。
くるむくんは手や指の動きがとても美しいので、それを際立たせるような振り付けでとても良かった。

「Don't tell me lies」ではいつものくるむくんからは発せられないような言葉(歌詞)の数々に目眩さえ覚えた。

「親愛なる君に」は特にくるむくんの言葉がそのまま心に入ってくる。さすが自分で作詞しただけあって、その言葉を紡ぐまでに積み重ねられた歴史を思わずにいられなかった。

面白いことに、自身が作詞した楽曲以外にも感情を乗せるのが上手い。さすが俳優さんだけあって、まるで自分のことのように表現するのが大変上手である。

歌についてはもう言うまでもないが、とてつもなく素晴らしかった。
初めての単独ライブであそこまで歌える俳優さんはなかなかいないのではないか、と言うほどの歌唱力。
数ヶ月前「ボイトレをしたことがない」と言っていた時には本気で耳を疑ったものだが、現在もそうだとすると今後確実に伸び代がある状態ということになる。これからの更なる成長を思うと末恐ろしくなるほどだ。


くるむくん自身について

ここまで書いて改めて思ったが、最近特に彼を「俳優」と括って良いのか疑問だ。
歌もダンスも殺陣も既に彼の強みの一つで、地域コラボで様々なグッズを出したり、自分で描いた絵をグッズに使ったり、毎月の配信で無邪気にファンとトークをしたり、毎週自身のオフィシャルサイトで写真や動画を公開したり、世界遺産での単独ライブを成功させたり。

たくさんの活動の全てから受け手への明確なメッセージが感じられ、常にファンを驚かせ、楽しませることを止めない。

この「常に」というのはファンとして本当に有難いことで、観劇やライブなどの「生で体感できるエンタメ」が日常から消えてしまった今、供給が常にあることは何にも代えがたく、大袈裟じゃなく「明日への活力」「生きる糧」になっている。

更に、今回のライブの収益の一部は募金に充てると聞いている。医療従事者の役に立ちたいと。
この状況で活動を続けるという強い意思を持っていること、心のベクトルを自分ではなく外に向けられること、本当にすごいと思うし尊敬している。
岡宮来夢くんは「俳優」の枠から飛び出た「エンターテイナー」だと、私は思っている。




観劇のない生活になってから随分経つ。
現場に行く前のソワソワや、開演前の緊張で血の気が引くような感覚。
前のように味わえるのはいつになるだろうと、何度考えても夢物語のように思えて、悲しくなるのは今でも同じだ。

でも、たった一人でステージに立ち堂々とした姿を見せてくれたくるむくんは本当にかっこ良かったし、配信を観た後数日間その光景で頭がいっぱいで、浮き足立つようなフワフワした感覚を久しぶりに味わった。

それは以前生で観劇した後に味わった気持ちに限りなく近いものだった。
生の観劇が大好きな私が、ライブ配信での観劇を好きになれるのだろうかと悩んだこともあるし、実際に結論は出ていないが、あの日の私にとっては、確かに「自宅」が現場だったんだろう。

くるむくんがステージに立ってくれなかったら、こんな感覚を味わえたかどうか分からない。


これからもたくさんのことにチャレンジし、努力し、素晴らしい景色を見せてくれるのだろうと思うと本当に本当に楽しみでならない。
それを可能な限り長く見続けたいし、自分なりに応援し続けたいと思う。

そしていつか、生でくるむくんに会える日が来ることを、切に願っている。