今生の別れ
かつてそう思って、心の中でお別れを告げた人がいた。
忘れもしない、2019年5月7日。ちょうど1年前だ。
刀ミュの単騎出陣アジアツアーの凱旋公演で、私は幕張メッセにいた。
初めての刀ミュの現場。
GW明けのド平日、当然休暇は取れず。地方住みだった私は、当日東京オフィスで1日仕事をして、帰りに幕張へ向かった。
終演後最終の新幹線にリアルダッシュで乗り込み、翌日は地元で仕事。
毎週遠征した4月を乗り越えてのこれ、今思えばわりとめちゃくちゃなスケジュールだったな。
ソワレだけでもいいからどうしても行きたかった。
行かなければ絶対に後悔することが明確だったから。
流司くんの演じる加州清光が大好きだし、私にとっては刀ミュの原点なのだ。
当時の単騎について、よく「集大成」という言葉が使われていた。
それまで毎年行われていた単騎が、きっと今後コンスタントには行われなくなる。
流司くんが加州清光を演じることも、今後あるのかどうか分からない。そんな予感がしていた。
だから幕張には「初めまして」と「さよなら」を告げるみたいな、複雑な気持ちで挑んだ。
勿論さよならなんて言いたくないけど、そのつもりでいないと本当にさよならだった時に耐えられる自信がなかったのだ。
ちょうど1年後の2020年5月7日、あの日と同じオフィスで仕事をした。
あと◯時間…!とカウントダウンしながらトイレの個室で音を立てずに暴れまわっていたことも思い出した(仕事しなよ)
帰り道の青とオレンジが混ざった空は、あの日ととっても似ていた。
京葉線に揺られながらあと○分後には…!って最高に幸せでワクワクしていた気持ちに、ひとときだけ戻れた気がした。
1年という時間を噛み締めながら観たアーカイブ配信(円盤はマチネなので)、びっくりするほど「今観ている」ように錯覚したし、始まった瞬間の感動とかいつもの「始まったってことは終わっちゃうんだ」っていう悲しさとか、本当に本当に終わらないでって心から願ったこととか、昨日のことのように思い出してたくさん泣いた。
当日泣きすぎでコンタクトが外れて最後らへん片目で観てたのも良い思い出(笑えるけど当時はなんで今~~~って思ってた)。
1年後にはまさか観劇のために東京に住んでるだなんて想像もしていなかったし、まさか観劇が消えた日常を送っていることも想像していなかった。
でも不思議なことに、映像を観て感じたことは「本当に世界は変わってしまった」という絶望より、「またこんな夢のような時間に出逢えるかな」という希望だった。
過去の自分の体験が、今の自分を励ましてくれる。
私は舞台に生かされている。
2020年に幕末天狼傳が上演されると発表があった時、あれが「お別れ」じゃなかったことがじわじわと押し寄せてきて、震えながら泣いた。
どんな形で上演されるのか、本当に上演されるのかは分からない。
でも、流司くんが再び加州清光であろうとしてくれた気持ちが手離しで嬉しいから、今は不安よりも喜びが大きい。
「久しぶり~!」を告げる気持ちで劇場に迎える未来があることを、心から願うばかりだ。