思い出はタカラモノ

舞台と推しの話メイン

舞台が観たい

このご時世何が正しいのか、誰が正しいかなんて誰にも分からないと思う。
私も自分が考えてることが正しいなんて少しも思っていないし、押し付けるつもりもない。

今私が心の底から思っていることは、この状況だとなかなか人に言うのは躊躇してしまう。自分の考えを話さないという選択をすることは苦にならないし普段なら絶対黙っているのだけれど、多分こんな気持ちになること二度と(あって欲しく)ないから、書き記しておく。



何度も言うけど、正しいとか正しくないとかとは全く別のところで、自分が今思っていることです。



私は舞台が大好きだ。

舞台おたくに就任(就任?)したのは1年前だが、エンターテインメントに助けられ、エンターテインメントのために生きてきてもう10年以上になる。
定期昇給がない今の会社で毎年昇給するくらいには、まぁそこそこ働いていると思う。
だが、決して自分の能力が優れているという訳ではなく、「現場に行きたい」という自分の欲求を最大限に叶えるためだけにしているだけのこと。


観劇の時自分の目に映った景色、感じた気持ちは唯一無二のもので、他の何にも代えられない。まさに「思い出はタカラモノ」だと思っている。

舞台に立つ人が全身全霊なら、私も全身全霊で挑まなくちゃいけない。
適当に仕事をして適当に日常を過ごして舞台に行くこともできるが、それだと舞台に立つために普段から努力を積み重ねている人に失礼だ。

だから私は仕事を頑張るし日常を丁寧に過ごすし、そんでもって胸を張って舞台に行くのだ。



自分が歩むおたく道は、修行のようだとたまに思う(修行?)


まず舞台に行くために、先行から一般までの長い期間チケット戦争に明け暮れる。その合間にはきちんと仕事をこなす。
チケット入手からは、公演に関するインタビュー記事を読んだり、出演する俳優さんのことを調べたり、過去作品を視聴したり、万全の受け入れ体制を整える。その合間にはきちんと仕事をこなす。
1ヶ月前あたりから「あと◯日…!」と毎日のように考え、何着ていこう、ネイルはどうしよう、美容院予約しなきゃ、うちわ何て書こう、ペンライトの電池は…とまるで結婚式さながらにわくわくする。(そのような結婚式はない)
その合間にはきちんと仕事をこなす。


休む間もないくらい忙しない日々が続くが、自ら望んでしていることで、ここに1ミリの義務感も生じていないから自分でもびっくりである。
合間の仕事が邪魔に思えることもあるが、そこも含めて全力を尽くす。他でもなく「舞台」の力が私にそうさせるのだ。
(随分立派に書いてみたが、少しでも手を抜いたらチケットの神様が微笑んでくれなくなるかもしれない、という心配も理由の一つである)

楽しみにする時間も全部ひっくるめて楽しいから、舞台上演の発表から当日、その後の余韻を感じるところまでずっと楽しいが続く。本当に、なんて幸せなことだろうと思う。


今の状況で、私は次の舞台をいつも通り楽しみにすることができない。
万が一中止になってしまった時に、心が折れてしまわないように予防線を張っているのだ。
本当は楽しみにしたいけど、ぐっと堪えてあまり考えないようにしているのだ。
夢への招待状が紙切れに姿を変えてしまうことは、数ヶ月前は体験すらしたことがなかったのに、今はもうあまり珍しいことではない。
でも本当は、こんな状況にだって慣れたくはないのだ。
「もしかしたら」を考えて、先の舞台はいつもより多めにチケットを購入しているが、本当は「もしかしたら」なんて1ミリも考えたくないのだ。


正直、つい数週間前までではこの状況がこんなに長く続くとは思っていなかった。
ただ、演目の中止がもたらす業界への影響はずっと危惧していた。

中止による損害。会社の存続。俳優さん、スタッフさんの生活。その家族の生活。
書ききれないほど色んな心配があるのに、国は「自粛」を要請するばかりで何の保障もしない。

上演するには感染予防対策が必要だが、万が一があれば上演した会社が責められることは想像に難くない。
中止すると大きな損害を被ることになる。
いずれの選択をしても大きなリスクがつきまとう。
こんなに難しい判断を「自粛」という都合の良い言葉を使ってそれぞれに委ねるなんて、なんて狡い国だろうと思う。

この状況が長く続けば続くほど業界は疲弊し、倒産する会社も出るだろう。
普段私たちは舞台のチケットを購入することで会社に貢献しているが、肝心の舞台が上演されない以上、残念ながら私たちにできることは何もないのだ。
(グッズや過去作品のBDを買う等できることはあるが、どう考えても中止の損害をカバーできるほどの力はない)


そして、もっと心配なのが俳優さんのこと。
演目によって異なるが、舞台が始まる前1ヶ月以上の稽古期間があり、上演は2~3ヶ月程度。俳優さんには、全ての上演が終わった後に報酬が支払われると聞いている。

私が目にした中でも、稽古を終えて1回も上演されずに中止となってしまった公演、ギリギリまで検討された結果上演されたものの途中で中止になってしまった公演、一旦中止となり続報を待っている状態の公演等があり、かなり厳しい状況であることは言うまでもない。

今回のことがきっかけで、俳優さんたちの素晴らしい才能に影が差してしまわないか、不安でたまらない。
公演を続けている人たちにも、いつもとは違う無用なストレスがかかり身体を壊してしまわないか、不安でたまらない。



大好きな舞台、私を助けてくれる舞台、明日も頑張ろうと思わせてくれる舞台。
素晴らしい景色を魅せてくれる人たちを思うことしかできない、自分の不甲斐なさに心が疲れていく。



そんな今の状況が、私はとても辛い。


舞台が観たい。
舞台を楽しみにしたい。
これからの未来も、舞台を観たい。


これまで当たり前に叶えられてきた夢という名の日常が、いつ戻って来るのか分からない。
その日常が、本当に戻ってくるのか分からない。
戻ってきても、それは形を変えているかもしれない。
その形に、自分が適応できないかもしれない。


それでも私は舞台が観たいし、その時が訪れたらまた絶対に劇場に足を運ぶのだ。絶対に。